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東京地方裁判所 昭和52年(ワ)11989号 判決

原告

鈴木藤枝

被告

富士タクシー株式会社

主文

一  被告は、原告に対して金二六〇万三、三九二円及び内金二四〇万三、三九二円に対する昭和四八年四月二六日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを五分し、その四を原告の、その余を被告の負担とする。

四  その判決の第一項は仮に執行することができる。

事実

第一申立

(原告)

一  被告は原告に対して金一、一〇〇万円及び内一、〇〇〇万円に対する昭和四八年四月二六日より完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は、被告の負担とする。

との判決並びに仮執行の宣言。

(被告)

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は、原告の負担とする。

との判決。

第二主帳

(原告)

「請求原因」

一  事故の発生

昭和四八年四月二六日午後一一時二五分項、静岡県浜松市布橋三丁目四番地先交差点内で、原告の同乗していた訴外大河内昭八運転の乗用車(タクシー、浜松五五か五二一)が西進中、北進して来た訴外奥園幸紀運転の乗用車(浜松五五か八五九、訴外中央自動車興業株式会社保有)と衝突して原告は後記傷害を負つた。

二  責任原因

被告は、原告が客として同乗していた訴外大河内昭八運転の乗用車の運行供用者であるから、自賠法三条により本件事故によつて原告が蒙つた人的損害を賠償すべき責任がある。

三  傷害の部位、程度

(一) 本件事故により原告は頭部外傷Ⅱ型、前頸部打撲等の傷害を受け左記病院に入・通院した。

(1) 小柳病院

昭和四八年四月二六日から同年五月一日までの六日間入院

(2) 熊谷病院

昭和四八年五月二日から同年五月一八日までの一七日間入院

(3) 塚越外科

昭和四八年五月二一日から昭和四九年六月二〇日までの三九五日間通院(内通院実日数二六日)

(4) 成川医院

昭和四九年六月二六日から同年七月一八日までの二三日間通院(内通院実日数一九日)

(5) そのほか慶応病院、市川第一病院に通院

(二) その後にあつても原告は今日まで首から肩にかけての痛み、後頭部から首肩にかけての痛み、首すじから肩、背中の凝り、のどから胸にかけての痛み、声のかすれ、歯痛右手脱力感、中指の痛み、めまい等の症状のため長時間座つていられない状態で不快感の連続である。

四  損害

(一) 治療費関係 四一万七、四一五円

右小柳病院、熊谷医院、塚越外科、成川医院での治療費四〇万五、八三五円及び小柳病院入院中の付添婦に要した費用一万一、五八〇円の合計

(二) 小柳医院入院中に要した諸費用

事故連絡のためのタクシー代 三、〇〇〇円

寝巻き等用品 八、二〇〇円

原告の夫、他二名が付添のため浜松市内に宿泊した費用 三万三、〇〇〇円

宿泊旅館から病院までのタクジー代 一、三八〇円

(三) 熊谷医院入院中に要した諸費用

小柳病院を退院し、都内に宿泊した費用 三万一、〇〇〇円

目黒から鷺の宮までのタクシー代 五、〇〇〇円

入院中に要した費用 三〇万円

退院時タクシー代 三、八〇〇円

(四) 塚越外科通院に要した費用

昭和四八年五月二一日から通院した費用 四六万円

昭和四九年一月二六日から同年二月四日までに要した費用 一一万円

昭和四九年二月二一日から同年二月二六日までに要した費用 五万円

昭和四九年四月二一日から同年五月一日までに要した費用 七万円

(五) 成川医院、慶応病院通院に要した費用 二三万円

この時のタクシー代は目黒から信濃町まで片道七六〇円であつた。

(六) 成川医院、市川第一病院、熊谷医院に通院入院した費用 七八万円

昭和四九年一〇月一〇日から同年一〇月一八日までの費用 八万円

昭和五〇年五月一〇日から同年六月六日まで成川医院に通院、市川病院に要した費用 三六万円

昭和五一年二月一九日から同年三月一五日まで、同年四月四日から同月九日まで、同年五月二二日から同年六月二日までに要した費用 三四万円

(七) 塚越外科、成川医院通院に要した交通費 二一万一、五〇〇円

(八) 休業損害 五六〇万円

原告は、事故当時大洋生コンクリート株式会社に事務員として勤めていたが今日までまつたく働けないでいる。事故当時の原告の給与は月額六万二、五〇〇円であつたが、主婦として家事労働に従事していたからこの分をさらに月額四万円に評価すれば昭和五二年一一月末日までの原告の休業損害は五六三万七、五〇〇円となるので右金額を請求する。

なお女子労働者の平均賃金と対比すると右原告の休業損害は控え目であり当然認容さるべきである。

(九) 逸失利益 五五五万円

昭和五一年賃金センサスによれば四九歳の女子平均賃金は一四四万六、〇〇〇円なので、月額一二万円とみて、さらに今後一〇年間原告の労働能力が半減することを明らかなのでその分収益が減少するとみてこれをライプニツツ方式により現価に引直すと右金額を下回らない。

(一〇) 慰藉料 三八〇万円

原告は前記のとおり各種の症状に悩まされており、今後の苦痛も甚大である。他方被告の誠意も認められないので右金額の慰藉料は妥当である。

(一一) 損害の填補

自賠責保険から五〇万円、被告から五九万一、三二七円の填補を受けた。

(一二) 弁護士費用 一〇〇万円

右填補分を差引いても本件事故による原告の損害は一〇〇〇万円を大幅に上回るが本訴では内一〇〇〇万円を請求することとし、弁護士に委任し、その費用として一〇〇万円を支払う旨約した。

五  よつて原告は被告に対し、一、一〇〇万円及び内弁護士費用を除く一、〇〇〇万円に対する昭和四八年四月二六日から支払済みに至るまで民法所定の遅延損害金の支払を求める。

「抗弁に対する答弁」

慶応病院関係分の治療費支払分を除きすべて認める。

(被告)

「請求原因に対する答弁」

一  請求原因一、二項は認める。

同三項中、本件事故による傷害の程度並びに小柳医院、熊谷医院、塚越外科、成川医院に入・通院したことは認めるが、その余の入・通院は不知、そして原告に後遺症があることは争う。原告の症状は昭和四九年七月六日に固定しており、その時点で後遺症と認められる程の症状はなかつた。

同四項中、(一)の治療費用関係及びその他の治療費のうち慶応病院の一万三、五八〇円、成川医院の一万六、〇〇〇円、市川第一病院の一万一、三九〇円(但し後記のとおり支払済の分がある)、次に述べる付添看護料等の一部並びに事故当時原告が大洋生コンクリート株式会社の事務員であつたことは認めるが、その余の損害については不知もしくは争う。

被告において認める損害は次のとおりである。

付添看護料 一万三、五八〇円

入院雑費 一万五、〇〇〇円

通院交通費 二一万一、五〇〇円

休業損害 九〇万四、〇二二円

原告の症状固定は昭和四九年七月六日で、事故前三ケ月間の原告の平均日給は二、〇八三円なので右限度ではこれを認める。

慰藉料 六七万五、〇〇〇円

二  原告の損害額の主張は種の点で不当、納得できないのでこれを指摘しておく。

小柳病院入院中は家政婦が付添つたのであるから、原告の夫、他の者の宿泊代を請求するのは不当である。

熊谷病院への入院は一七日であるからその諸費用として三〇万円というのは不当である。

塚越外科への通院実日数は二六回であるからその都度神津島から上京して来たとしても四六万円もの金額になることはない。

成川医院、市川第一病院、熊谷病院に入・通院したとして主張している治療費等も不当に多額過ぎたり、通院の事実がなかつたりして失当である。従つてこれら病院への通院費用も不当である。

前記のとおり原告には後遺症といえるほどのものはないのであるから逸失利益の請求は失当である。

「弁済の抗弁」

請求原因四項(一)治療費関係、慶応病院の治療費一万三、五八〇円及び通院費、慰藉料一九万九、九二〇円、休業損害二四万七、八七七円を被告において原告に支払済みで、任意弁済の額はこれら並びに自賠責保険金五〇万円の合計である。

第三証拠関係〔略〕

理由

一  請求原因一、二項は当事者間に争いがなく、よつて被告は原告の本件事故による損害を賠償すべき責任がある。

なお、後にみるとおり事故当時原告は、夫鈴木利一の営む東京都神津島村所在の大洋生コンクリートに事務員として勤務していたもので、証人鈴木利一の証言、原告本人尋問の結果によれば、原告は同社の慰安旅行で浜松市に行つた際本件事故に遭遇したもので、訴外大河内昭八運転の乗用車にはこの時夫の鈴木利一、その他一名が同乗していたことが認められる。

二  本件事故により原告が請求原因三項(一)で主張する傷害を負い、そのため事故当日から昭和四九年七月一八日までの間、小柳病院、熊谷病院、塚越外科、成川医院に入・通院したことは当事者間に争いがなく、そのほかに慶応病院、成川医院、市川第一病院に入・通院したことは被告においてこれを争わないところである。

原告はその後にあつても本件事故を原因とする請求原因三項(二)のごとき症状に悩まされ通院等を重ねまた後遺症が残つている旨主張、供述するところ、右争いのない事実並びに本訴で提出された診断書等の書証をもとに原告の治療経過、症状を整理し、且つ医師による診断の結果を列記すると別紙(一)治療経過表のとおりとなる。なお掲記してある各書証のうち甲種一二号証、同二〇号証の一、二、同二三号証については証人鈴木利一の証言、弁論の全趣旨により成立を認めることができ、その余の各証については成立等に争いはない。

さらにこの治療経過につき証人鈴木利一の証言、原告本人尋問の結果によれば、前記のとおり原告は会社の慰安旅行中に事故に遭遇したためとりあえず近くの小柳病院(浜松市所在)に入院したが、転医できるようになるや退院して都内目黒区に住む子供の所に移り、そこから改めて熊谷医院に入院したこと、原告の住所は神津島にあるためその後の塚越外科、成川医院等の通院は上京して右子供の所に泊りできるだけ集中的におこなつたものであること、慶応大学病院へは後遺症についての診断を受けるため通院したものであるが、通院期間が短かかつたため充分な検査等の行なわれないまま後遺障害診断書(乙第一号証)が作成されたこと、もつとも同病院通院当時は事故から一年以上経過しており、後に述べるごとく家事には従事していたこと、なお別紙(一)治療経過表には記載されていないが、神津島でも工合が悪くなつた時には国保診療所に通院して注射等の治療を受けていたこと、の各事実が認められる。

三  また成立につき争いのない甲第八号証、乙第四号証、証人鈴木利一の証言により成立の認められる甲第九号証、同第一〇号証の一ないし三、同第一一号証の一、二、同証人の証言、原告本人尋問の結果によれば、原告は事故前家事に従事するほか夫の営む大洋生コンクリート株式会社に勤務して伝票の整理、経理を担当して月額六万円余の給与の支給も受けていたが、事故による負傷のため休職し、昭和四八年八月二三日をもつて退職扱いとなり、同社は代わりの職員を雇つて現在に至つていることが認められる。

さらに証人鈴木利一、原告は、事故後原告は半年位は家事にも従事できない状態であり、その後は他に家事をする者がいないことから苦痛をしのんで家事に従事するようになり、一年後位から相当良くなりかなり家事もできるようになつたが、請求原因三項(二)記載のごとき症状があり始終苦痛を訴え家族及び自身は辛い思いをしている旨及び事故前原告は健康で家事あるいは大洋生コンクリート株式会社の仕事を何らの支障なく行なつていた旨供述する。

四  右のとおり原告において夫の営む会社とはいえ退職していることや別紙(一)治療経過表から明らかなように原告において終始同様の症状を訴えていることからすると、原告が現在その訴えるがごとき症状に悩まされていることは認めることができ、そして本件事故により原告が頭部外傷、前頸部打撲、歯齦裂創、右中、環、小指脱臼を負つたことからするとかくのごとき症状の後遺症が残ることは充分考えられるところである。

しかし別紙(一)治療経過表から明らかなごとく本訴に提出された証拠による限りレントゲン検査等において原告に本件事故によるものと思われる異常所見は認められないのであり、また原告は事故後五年近くもほぼ同じような症状を訴えていることからすると原告の症状が心因的なものに起因すると考えざるを得ないところである。

のみならず原告には加齢によるのではないかと推認される変形性脊椎症(甲第二二号証、市川第一病院診断書)、椎間の狭少(甲第二三号証、神津村国保診療所の診断書)の症状がある旨診断されていることからすると原告の症状は加齢によるものもあると推認せざるを得ない。

前記のとおり慶応大学病院では充分な検査のされないまま後遺障害診断書が作成されたとはいえ、その頃相当よくなつていたことは原告において自認していることからすると、本件事故による負傷を原因とする原告の症状はその頃固定し、そしてその後の原告の症状は右に述べたとおり本件事故による負傷の後遺障害と認められる部分もあるも、本訴で提出された証拠による限り心因、及び加齢によるものも大きな部分を占めていると推認せざるを得ない。

五  そこで右事実を前提として本件事故による原告の損害について検討するに次のとおりとなる。

(一)  治療費関係 四一万七、四一五円

事故当日から昭和四九年七月一八日までの小柳病院、熊谷病院、塚越外科、成川医院での入・通院に要した治療費及び小柳病院入院中の付添婦に要した費用の合計が右金額となることは被告においても争わないところである。

(二)  その他の治療費関係費 二九万一、四七〇円

右のほか原告は治療費関係として請求原因四項の(二)ないし(七)のとおりの損害を蒙つたと主張し、証人鈴木利一は同旨の供述をする一方これら損害を記載したメモ(甲第二一号証)及び交通費明細書(甲第一四号証)を提出している。しかしこの甲第二一号証のメモは請求原因四項の(二)ないし(六)のとおりの損害がそのまま記載してあるだけで、支出の具体的内容の記載はなく、被告の主張するとおりその額が不合理としか考えられなかつたりしてここに記載してある損害をそのまま認めることは到底できないところで、結局右各請求のうち次の各損害のみ認めることができる。

(イ)  小柳病院入院中の夫の付添費用 二万四、〇〇〇円

同病院入院中職業的付添婦がついたことは前記のとおりであるが、原告が旅行中に本件事故に遭遇したこととその症状に鑑み同病院入院中夫たる鈴木利一が付添つたのは相当と認められる。

旅行中であつたことを考慮して一日当り四、〇〇〇円の費用とみて合計右金額となる。

(ロ)  その他の治療費 四万〇、九七〇円

前項のほかに治療費として、慶応病院(一万三、五八〇円)、成川医院(一万六、〇〇〇円)、市川第一病院(一万一、三九〇円)を要したことは被告においても争わないところであり、他には治療費を支出したことを認めるべき証拠はない。

(ハ)  入院雑費 一万五、〇〇〇円

後記のとおり本件事故による原告の症状は昭和四九年八月末をもつて固定したとみられるが、市川第一病院へは検査のため入院しており、従つて本件事故によるものと認められる。

よつて原告の小柳病院、熊谷医院、市川第一病院の各入院のみ本件事故によるものと認められるところ、その入院諸雑費としては被告の自認している右金額をもつて相当とする。よつて入院諸雑費としての損害は右限度でのみこれを認めることができる。

(ニ)  通院交通費 二一万一、五〇〇円

被告において右金額の交通費についてはこれを認めているところ、成立につき争いのない甲第一四号証によれば、右金額は神津島から都内まで四五往復した額であることが認められる。前記のとおり原告は通院のたびに上京していたのではなく一度上京すると集中的に都内の病院に通院していたのであり、この点を勘案すると通院交通費としては被告の認める右金額をもつて相当とする。

(三)  休業損害、逸失利益 一七七万三、三〇〇円

別紙(一)治療経過表のとおり原告は昭和四九年七月六日に慶応大学病院で症状が固定したと診断されている。同病院では充分な検査を受けなかつたとはいえこの時までに事故から一年以上経過していることや、その後もほぼ同様の症状を原告において訴えていることからすると、遅くとも原告の症状は同年八月末をもつて固定したとみて相当である。そして前記のとおり原告は事故の半年位後からは無理をしてではあるが家事に従事していたのであり、原告の訴える後遺障害が本件事故に起因するものばかりとは認め難いことも前記のとおりである。

事故当時原告が大洋生コンクリート株式会社から得ていた給与は原告の年齢(昭和二年六月生まれ)の女子労働者の平均賃金を下回る額であるが、原告はそのほかに家事に従事していたことは前記のとおりである。

そこで原告の家事労働も含めた収入を同年齢の女子労働者の平均賃金と同額とみ、そして昭和四八年末まではその全部を、その後症状固定の昭和四九年八月末まではその五割を、症状固定後はその一割を五年間にわたつて喪失するとして休業損害、逸失利益を算出するのが妥当なところ、その額は別紙休業損害、逸失利益算出表のとおり右金額となる。(一〇〇円未満切捨)

(四)  慰藉料 一三〇万円

本件事故の態様、入・通院の期間、後遺障害の程度に鑑み、慰藉料は右金額が相当である。

(五)  損害の填補

右(一)ないし(四)の損害の合計は三五八万二、一八五円となる。そのうち一三六万五、二一二円の填補を受けたことは原告において認めるところであり、成立に争いのない乙第九号証の一ないし三によればこのほか被告は慶応大学病院の治療費一万三、五八〇円を負担したことが認められる。

よつて被告のなした填補額の総計は一三七万八、七九二円となり、右損害合計からこれを差引くと残額は二四〇万三、三九三円となる。

(六)  弁護士費用 二〇万円

本件訴訟の内容、審理経過、認容額に鑑み弁護士費用のうち本件事故による損害と認められるのは右金額が相当である。

(七)  合計 二六〇万三、三九三円

六  よつて原告の本訴請求は被告に対して二六〇万三、三九二円及び内弁護士費用相当の損害を除く二四〇万三、三九三円に対する事故当日の昭和四八年四月二六日以降完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるのでこれを認容し、その余の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用して主文のとおり判決する次第である。

(裁判官 岡部崇明)

(一) 治療経過表

昭和四八年

(一) 4・26~5・1 小柳病院入院(六日間)

〇主な治療

頭部・頸部・右手レントゲン撮影、右手、口腔内縫合、四指の脱臼整復等

〇昭和四八年五月二日付診断書(甲三)

頭部外傷Ⅱ型、前頸部打撲、歯齦裂創、前胸部打撲、歯牙損傷、右中・環・小指第一指関節脱臼、右中指挫創、右小指第一指骨々折、前頸部に腫脹著明、右中・環・小指に変形(十)、徒手整復術を行う、歯齦部に約五センチの裂創あり縫合す、疼痛著明、食事摂取不能なり、歩行ができるようになり転医す。

附添看護を要す。昭和四八年五月一日転医

―甲第三号証、乙第三号証―

(二) 5・2~5・18 熊谷医院入院(一七日間)

〇主な治療

胸部・頭部・頸部・手のレントゲン撮影、投薬、静脈注射等

〇診断書(甲四)

胸部打撲症、頭部打撲症、頸部打撲症及び頸性頭痛症候群、左前腕部手部打撲症、頭痛を訴える、またしびれ感もあり(肩上腕、手部)、Ⅴ線上骨、関節に異常所見なく、諸反射正常。後遺症なし。

転医

―甲第四号証、乙第六号証―

(三) 48・5・21~49・6・20 塚越外科通院(治療実日数二六日)

〇主な治療

脳波検査、レントゲン撮影、頸椎けん引、超短波、投薬

〇昭和四九年七月一五日付診断書(甲五)

頭部・顔面挫創、頸椎捻挫、腰部挫傷、頭痛、頸部痛、右手疼痛あり。

昭和四九年六月二〇日転医

―甲第五号証、乙第七号証―

昭和四九年

(四) 6・28~7・18 成川医院通院(治療実日数一九日)

〇主な治療

良導絡治療、刺絡

〇昭和四九年八月一二日付診断書(甲六)

外傷性頸椎腰部症候群、昭和四九年六月二六日初診、初診時右歯齦裂創痕のしびれ、右手に力が入らず握力低下(R一三キロ、L一七キロ)、頸、肩のこり、腰痛、息苦しい等の諸症を訴える。

―甲第六号証、乙第八号証―

(五) 6・24~7・6 慶応大学病院整形外科通院(治療実日数三日)

〇昭和四九年七月八日付後遺障害診断書(乙一)

昭和四九年七月六日症状固定

傷病名―外傷性頸椎症

主訴又は自覚症状―項部痛

他覚症状及び検査結果―右握力低下、項部ないし両肩部圧痛、レントゲン上異常なし

(後遺障害については記載なし)

―乙第一号証、同第九号証の一ないし三―

昭和五〇年

(六) 5・14~5・21 成川医院入院(八日間)

〇治療

ノイロメーター

―甲第二〇号証の一―

(七) 5・23 市川第一病院通院

5・27~5・31 同病院入院(五日)

〇昭和五三年六月一四日付診断書(甲二二)

病名―一 変形性脊椎症

二 胃炎

三 むち打ち症の疑い

前記疾患により諸検査及び治療の為昭和五〇年五月二三日初診、同月二四日より同月三一日まで入院致しました。

(入院期間の記載は誤記)

(八) 昭和五一年二月二三日付熊谷医院の医師作成の診断書(甲第七号証)

病名―頸性頭痛症候群

頭書の疾病により昭和五一年二月二三日より約三ケ月の安静加療を要す

(九) 昭和五一年三月三〇日付原告の被告宛の手紙(甲第一七号証)

事故三年を経過したが依然として頭、肩、背、手等が痛み特に肩こり等で毎日気分の悪い日を送つているとの記載あり

(一〇) 昭和五二年一二月二日付原告の症状を記載した書面(甲第一五号証)

請求原因三項(二)と同旨の記載内容

(一一) 昭和五三年四月三日付神津島村直営国保診療所医師西川巌作成診断書(甲第一二号証)

病名―全身打撲後遺症疑い

頭書の疾患により当分の間通院加療を要します。現在左頭痛、眩暈、左難聴感時々あり、右下顎口腔内しびれ感及び知覚異常、咽頭腫脹感、左眼霧視時々あり、頸部倦怠脱力感、肩肺背部疼痛、筋緊張、前胸部痛、両膝関節痛あるも、腫脹、局所熱運動制限等認めず

(一二) 昭和五三年六月二六日付神津島村直営国保診療所医師西川巌作成診断書(甲第二三号証)

病名:全身打撲後遺症疑い

態様:昭和四八年四月二八日交通事故、全身打撲、右中指薬指小指脱臼した由。

現在左頭痛、後頭部頭重感あり、頸部(後方)より肩にかけ疼痛あり、特に右肩著しく、又肩凝り著明、背中にかけて痛み持続性あり、腰痛もあり、尚眩暈時々あり、左難聴感、右下顎、口腔内しびれ感あり、味覚正常なるも温度覚触覚は過敏、口咽頭腫脹感あるも異常所見なし、左眼霧視を訴える、両膝関節痛時々あるも特に腫脹局所熱及び一の動性等異常所見なし。レントゲン撮影にて頭蓋骨異常所見なし。第五―六頸椎間狭少、第五頸椎棘突起骨折化骨像有り、第六―七胸椎椎間狭少、第五腰椎椎体に変形有り又辷り症様像を認める。

休業損害、逸失利益算出表

(1) 48.12末までの8ケ月

平均賃金98万6,000円 全部喪失

98万6,000円×8/12=65万7,333円

(2) 49.1~49.8までの8ケ月

平均賃金128万2,800円 5割喪失

128万2,800円×0.5×8/12=42万7,600円

(3) 49.9~49.12までの4ケ月

平均賃金128万2,800円 1割喪失

128万2,800円×0.1×4/12=4万2,760円

(4) 50.1~50.12

平均賃金155万4,400円 1割喪失

155万4,400円×0.1=15万5,440円

(5) 51.1~51.8までの8ケ月

平均賃金144万6,000円 1割喪失

144万6,000円×0.1×8/12=9万6,400円

(6) 51.9以降3年間

平均賃金144万6,000円 1割喪失 ライプニツツ系数2.7232

144万6,000円×0.1×2.7232=39万3,774円

(1)+(2)+(3)+(4)+(5)+(6)=177万3,307円

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